変貌するブランディング

当事者ブランディング、シティプロモーション/シティセールス、その他ブランディングに関わる諸々、論文を掲載しています。

アピールすべきことを絞り込む


 シティプロモーション戦略の立案プロセスの最後にお伝えしたいのは、「フォーカス」についてです。

 一部の自治体を除き、予算や人員には限りがあるはずです。予算がない、人員がいない。私のいる四街道市でも同様です。特に予算が十分とはいえません。もちろん、民間企業でも常に付きまとう問題です。

 シティプロモーション戦略立案のプロセスで、何を目的として、誰に対してアプローチして、今はこのような状況であるけれど、将来的にこのようにしたい、そしてそのためにはこういう行動を遂行すべきだ…と方向性が見えてきたとしても、その先にある選択肢もいまだかなり幅広いわけです。

 行政サービスとして充実したい事業、あるいは新規事業もたくさんの選択肢があるかもしれません。また同様に、市民や市外の方々に伝えたいこともたくさんあるでしょう。

 ただし、上述の通り、リソース(おかね、人)には限りがあります。ですので「絞り込み」(フォーカス)の作業が必要です。

 私自身の民間企業時代もそうでしたが、開発部門の人々は「このゲームが新しい事業だから、これを宣伝してくれ」「いや、こっちのコンテンツが新しいから、こっちを優先してくれ」と、それぞれの立場を主張します。しかし、それに従って、あれもこれも開発したり、宣伝したりしていては、リソースも分散してしまいますし、結局は消費者(市民)にも届かなくなってしまうわけです。

 行政の場合、もちろん民間企業のような割り切った絞り込みはできません。子育て施策だけでなく、高齢者福祉、障害者福祉、地域自治、窓口サービス等々、一定の予算を費やさなければならない事業は多数あります。

 ただし、何らかの特徴を持った街づくりを進めるとしたならば、どこかを削り、特徴としたい領域に比重を高める工夫が必要となるわけです。ここではプロモーションを主軸に書いていますので、事業におけるフォーカスについては多くを語りませんが、広報、宣伝、プロモーションについても同様にフォーカスが必要です。

 四街道市の場合は、ほぼ「子育て」と「教育」面での事業やサービス訴求にフォーカスを置いています。一昨年制作したPR動画「地域対抗MCバトル」も、それにならって「子育て」を主軸にアピールし、それを「ロケーション」(立地のよさ)、「ネイチャー」(適度な自然)の要素で補完するような構成になっています。

 皆さんも自分に照らすとおわかりになると思いますが、誰かからいっぺんにいくつものをことをいわれたら、覚えきれないでしょう。では、いくつくらいなら覚えられるでしょうか。おそらくいいところ3つくらいです。私が携帯電話会社に勤務していた時も、同時に宣伝するのは3案件とおおよそ決めていました。(1)新機種、(2)新しいサービス、(3)料金プランというような構成です。また、売上に影響する一番の要因は携帯端末(電話機本体)であることもわかっていましたので、コマーシャルをオンエアする量も携帯端末を最優先としていました。

 このことは行政でも同様であると思います。市民や市外の方々にアピールしたいことは多数あっても、絞り込むことが大切です。仮に予算が300あったとした場合、

 10案件×30=300 と配分するのではなく、

 3案件×100=300 とした方が人々には確実に伝わります。

 もちろん、何か1つに絞り込めるのならばそれが最も望ましいですが、せいぜい3案件程度にするのがベターです。庁内の論理、政治的な絡み等々あって、あれもこれもアピールしなければならないという事情もありそうな気がしますが、時にそこは戦う必要があります。

 そういう意味では「うどん県」(香川県)などの訴求は勇気ある決断だったと思います(その後「うどん県。それだけじゃない香川県」へと変遷していますが)。少なくとも一旦そこまで絞り込むことで、多くの日本国民に到達させることはできたのではないでしょうか。

 結論です。シティプロモーションとしてアピールしたいこと多数あれど、優先順位づけしたのちに3案件以内にフォーカスするべし、です。

 次回からは、具体的な施策のお話をしたいと思います。

 

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